日本の夏を代表する祭りに数えられる、徳島の阿波踊り。
街中にポスターが貼られ、県民は浮き足立つ。
そのポスターを作った男は、今日もMacに向かう。
碇恭典。
依頼された印刷データはどのように作られているのか。
その、デザインが生まれる現場に密着!
朝9時。挨拶もそこそこに碇はデスクに向かう。
ー1日の仕事の流れを教えてください。
「2日前にはある程度(作業の)工程が組まれとるから、その仕事をするかな。仕事内容は2日前から「明後日こういう仕事があるな〜」とは確認しとるんやけど。飛び込みの仕事もバンバン入ってくるから。今までと違って全体的な仕事量も人の配分も変わってきとるからそっち(飛び込み)の仕事もしよんやけどな〜。最近は制作の方にCTP(データから直接、印刷する為の刷版を出力すること)の作業が乗っかってきたから、忙しくなったかな。ほんでからお昼食べてまた仕事して…で、帰ってYouTubeとか見たりして寝る!」
「仕事はデザインの仕事が多いよ〜。ポスターとかチラシとか作ったり。それこそチラシとかも面白いし、新聞広告の15段のチラシとかも作れて面白かった。大きいやつとかはちょっと面白いかな、仕事。最近でいうと経済冊子とかでグラフ作ることが多くなったかな…。最初作り方わからんかったもん。この間営業とサポートの人に「エクセルの仕方教えてください」って言ったもん(笑)。」
「仕事は家でもするかな。「あ〜、うちでしよう」って。「もうこれ以上会社でおってもいいアイデアが出てけえへん」って。なんぼやっても丸しか出んときあったし。「全然デザイン出えへん、まずいこれ」って(笑)。」
ー繁忙期はどうですか?
「鬼っとる。ふふふ(笑)。鬼っとるよ〜。みんな(デザイン・制作チーム)普通の顔してしよるけどなあ…途中からちょっとみんな元気になってくるんよな。制作しかおらんくなってくるから(笑)。この間なんか「液体金属を見た」って言ったら、みんなに「嘘や嘘や」って言われてな。「ほんまに見たんです!!!!」って言って(笑)。そしたら「ええから〜そういうの」って(笑)。ちょっとハイになってんのかな。でも、どんなに忙しくてもとにかくご飯を食べるかな。うん。食べたくなかっても食べるようにするし。身体崩したらもう全部終わりやし。他の人に迷惑いくで〜、休んだりとかは。ゆっくり休めんもん、なんか。次の日が怖くて(笑)。」
ー印象に残っていることは。
「う〜ん。コンペとかで仕事が取れたら嬉しいかな、やっぱ。デザイン作って「これどうですか〜?」って言うて持って行ってもらって、それで、「いけた!取れた!」ってなったらそれがやっぱり嬉しい。前の職場の時はコンペとかまで手が回らんかったし、うちの会社に来てからがそういうの出すのは多いかな…。ちょくちょくコンペに出してくれよったりするし。そりゃまあプレッシャーもあるけど、ふふふ(笑)。それで取れたらやっぱり嬉しい〜。」
「あかんかったなあ〜っていうのは、この前あったポスター(のコンペ)で、デザインチーム総動員で頑張ったけど…誰も引っかからんかったっていうんが…「なんでやねん!」って思ったけどなあ。みんな良いん出してきよったけど、どこが良いっていうんがよう分からんしな〜。しようと思ったらずっと出来るでぇ、色変えたり書体変えたりだけでも違うようになっていくし。」
ー自分の中の(デザインする上での)落とし所についてはどうですか。
「納得できる部分を作って、これはこうだから、これはこれで良いんだっていう風に持っていく。そっちだけで見るとあかんかっても、こっちがこういう理由で良いんだから、そっちも連なって良いように見える理由というか、理屈を作るようにしとるかなあ。」
仕事をする上で、碇が大切にしていることがある。
「独りよがりのデザインは作らんようにしてるかなあ。デザインする上で、“お客さんがおるからデザイナーとしての仕事がある”と考えとるから。逆のパターンで言ったら、アーティストと呼ばれる人らになっていくと思うんよ。その、“自分がおってお客さんが自分に来てくれる”やったらアーティストやけど、お客さんからもらっとることやから、その人の意向に沿ったものを絶対作らなあかんっていうんはいつも頭に置いて仕事しよるな。そこは気ぃつけとるかな。」
依頼人の求めているものは何か、悩み、考え続ける。
納得がいくまでとことんデザインを考え直す。
そんな碇に聞いてみた。
「マジックだ。」
「ありがとうございました。」
こうして碇は会社を後にした。
終
▼ダイジェストムービー
※プリンティング松下の流儀は2ヶ月に1回更新の連載記事となります!次回もお楽しみに!